モンゴル (2)

6月28日〜7月3日 ウランバートル近郊

旅行者向けの快適な”ツーリストゲル”
ツーリストキャンプでゲルに泊まる

  2003年6月28日 ウランバートル〜テレルジ 走行 64km TOTAL 5,067km
 馬とヤクに乗る

馬に乗って草原の散歩 スカイケンジさんと三人でウランバートル近郊の保養地を訪れた。ここは外国人が多く来る観光地でもあるが、地元の人の癒しの場にもなっているようで、都会ウランバートルからやってきたモンゴル人がリゾートライフを楽しんでいる。

 ここでは乗馬にトライ。馬に乗るなんて98年のコロンビア以来だが、馬を貸してくれた遊牧民の少年は僕たちが馬に慣れていないとわかると手綱を曳いてゆっくりと歩いてくれた。
 そういえばコロンビアの時は自称ゲリラ兵士だというガイドが僕の乗った馬の尻をバチバチり叩き、馬を思いっきり走らせてくれたっけ。

 ゲルに泊まる

 本日の宿は遊牧民の移動式住居、”ゲル”の中。モンゴルにはこのように”ゲル”を利用した宿泊施設(ツーリストキャンプと呼ばれる)が各地にあり、安い料金で泊まれるようになっている。内部にはベッドやイス・テーブル、薪ストーブが装備され、火を入れれば寒い日もTシャツ短パンで過ごせるほど暖かい。バイクをゲルのそばに横付けできるところでは荷物運びが楽で、町中のホテルとは比べものにならないほど快適。町から離れた草原の中に設置されていることが多いが、レストランも併設されているので食べ物の心配もなかった。

ゲルの外観 ゲルのベッド

扉と流し台 壁は格子状のフレームがグルッと一周している

ゲルの天井 柱は二本 薪ストーブ 室内で焚き火の気分が味わえる

 【みどり日記】

 テレルジ国立公園

遊牧民の少年 ウランバートルから70キロのテレルジ国立公園は、それまでの平らな草原地帯とは異なり、奇岩や樹木が目立つ保養地だ。テレルジまではほぼ舗装路なので、オンロード車でも大丈夫。
 モンゴルのガソリンスタンドは、前払い式のロシアとは違い日本とほぼ同じ要領。ほとんどのスタンドではお店の人が入れてくれる。入った量と料金が表示されるので、それをその場で支払えばよい。だいたい、オクタン価93のガソリンでリッター当たり400〜450tg(40〜45円)程度。
 途中、観光名所らしい場所で昼食をとった。駐車場と食堂が離れているためバイクが心配で入るのをためらっていたら、そこにいた人がバイクの番をしてくれると言う。食事をして戻ってきたら、遊びに来ていた大勢の子供達も一緒になってきちんとお行儀よく座ってバイクの番をしていてくれた。比較的モンゴル人は控えめな人が多く、バイクを置いておいても、持ち主がその場にいなければあまり寄ってこないし手も出してこない。遠慮がちに眺めるだけ。持ち主が現れるとやっと寄ってきて、興味深そうに見ている。こんな奥ゆかしい国なので、旅もしやすい。

 

  2003年6月29日〜7月1日 テレルジ(連泊)〜ウランバートル 走行 0km+63km TOTAL 5,130km

 スカイケンジさん

 朝、スカイケンジさんが出発していった。彼はこの後3ヶ月かけてヨーロッパまで走る予定。またどこかでの再会を願ってお見送り。

スカイケンジさんとBMW-R1150GS

 【みどり日記】

 のんびり過ごす

ヤクに乗る。「ブーブー」と鳴く 1泊のつもりが、ゲルのあまりの心地よさに連泊。旅行者向けに作られたツーリストキャンプという施設でのゲルステイは、キャンプとホテルのちょうど中間の快適さ。昼間は天窓から入る光だけで室内はとても明るい。普通の住宅の窓からではとても得られない光量に、ゲルの構造のすばらしさを感じた。帰ったらうちも天窓付けようかしら。それよりも、ゲル買って住もうかな。
 私たちの泊まったサン・ジョールチン・ツーリストキャンプのゲルは、1棟14000tg(約1400円)。それをスカイケンジさんと3人で泊まって割ったので、一人当たり500円弱で泊まれた。併設の管理棟にレストランやトイレ、シャワー室などがある。レストランの食事は、注文を取ったところで一から作りはじめるので、一時間くらい待たされる。でも、安い値段でモンゴル料理などが堪能できた。
 夜中に外に出て空を見上げたら、絵に描いたような満天の星。天の川も見える。流れ星にお願い事をしていると、神々しささえ感じてきた。思わず寝ている弘行を起こす。だって、こんな夜空なら一緒に見たいもの。
 
 アースロード

 地図ではテレルジの奥は行き止まりになっている。私たちの好奇心は、行けるところまで行ってみたいらしい。舗装路はやがて砂利路になり、草原の轍のようなアースロードに変わっていった。道はウランバートルに戻る方角に向かっている。このまま進めばウランバートルに帰れるかもしれない。弘行の勘を信じて、心細く続く道を走る。いくつかの小さな集落では、子供達の純真な笑顔に出会った。なんだか私の甥っ子に似ている子だなぁ。やんちゃ坊主を見ながら日本の家族のことを思い出した。
 ウランバートルに無事到着。わずか70キロほどの道に、大冒険をしたような気持ちになった。

 

  2003年7月1日〜7月3日 ウランバートル(連泊) 走行 0km TOTAL 5,130km
 ザハ(市場)見物

 3日、ウランバートル市東部にある市場「ナラントール・ザハ」を見物。そこは、およそ考えられる日用物資はほとんど揃えられており、食品はもちろん、果ては遊牧民の家「ゲル」まで売られていた。ゲルの値段を聞くと骨組みが220,000Tg(約2万2000円)、周りを覆うフエルト、天幕などが730,000Tg(約7万3000円)とのこと。つまり合計9万5000千円でゲル一棟が買える計算だ。ベッドやストーブなどを入れても20万円でお釣りが来るだろう。日本まで送ったら送料がどれくらいになるか知らないが、長野の田舎にゲル10棟くらい並べた宿泊施設を作ったら繁盛したりして。

 バイク部品を扱っている店もあった。残念ながら日本製バイクの部品はほとんどなく、売られているのはロシア製バイクのものばかり。しかしシリンダーやピストンをはじめ、エンジン部品のほとんどが揃っていた。タイヤは3.50-18サイズのロシア製が手に入るので、250クラスのオフロードバイクに乗っている人はリプレースが可能だ。(但しパターンはオン寄り)

 泥棒!

 こうしてあれこれ露店に並ぶ商品に見入っていたのだが、人混みの中でみどりが泥棒に遭ってしまった。詳細はみどり日記で説明してもらおう。

 【みどり日記】

 ザハ見物(バッグを切られる)

 行く前からザハは危ないと聞いていた。特にこの「ナラントールザハ」はこの辺りで一番大きく、スリも多いらしい。ゲストハウスのお客さんで、「気を付けて」と注意をしたのにやられた人がいたという。なんて馬鹿な人だろうと人ごとのように思っていたら、それが自分だったなんて。
 50tg(約5円)の入場料を払って中に入ると、さすがに怪しい雰囲気。持っていたナイロン巾着の口元に注意を向けながら歩いた。特に人が多い一画を通ったときのこと、前後に圧迫感を感じた。特に背後。ぐいぐい押されるような感じなので、私も逃れるように前に出た。そのときはすぐにスリとは思わなかったけれど、振り向くとそいつと目が合った。やられたかと思い、まずポケットのお金を確認した。大丈夫。ホッとしてナイロン巾着に目を向けると、サクッと10cmほど切られていて、中の物が出かかっていた。幸い、小物をビニール袋にまとめて入れていたので、それをつかんで引っぱっり出そうとしたけれど、引っかかって盗れなか
ったようだ。気づくのが遅かったらそれもやられていたことだろう。
 不覚にもバッグは口元だけ気を付ければいいように思っていた。切って盗むという手があることを忘れていた。だいたい、モンゴルだから未遂で済んだのかもしれない。他の地域だったら、たとえ私が気づいても諦めずに奪い取っていたことだろう。これからもっと治安の悪い地域に行くわけだけれど、その前にいい勉強をさせてもらった。ちょっと気のゆるんだ私に、神様が活を入れてくれたような気がした。  

 モンゴル人の家庭にお邪魔して「ボーズ」を作る

 モンゴル人女性のバヤサーと出会ったのは、インターネットカフェだった。彼女は大学で日本語を勉強していて、6月に卒業したばかり。今は通訳の仕事を探しているそうだ。モンゴルの学校は、9月から新学期が始まる。6月から8月の3ヶ月間は夏休み。そう、今は夏休みの真っ最中なのだ。彼女も高校生の妹エンフェと二人で街を歩いていた。彼女等にモンゴルの生活について、いろいろと教えてもらった。モンゴルはファミリーネームはなくてお父さんの名前を付けるとか、本名は長いので省略した呼び名を使うとか、アパートの家賃はだいたい3000円くらいだとか、いろいろ。

 そして翌日はバヤサーの家の夕食に招待された。アパートは外から見たイメージとは裏腹で、中は日本のマンション風の素敵な家だった。そして物もごちゃごちゃと多くなく、すっきりとシンプルなのがよい。居間の壁にはチンギスハーンの絵柄を織り込んだ絨毯が架かっていた。モンゴル人にとってチンギスハーンは、今でも厚い尊敬の対象なのだ。
 今日の夕食はモンゴル料理のボーズだ。小さな肉まんのようなもの。一緒に台所に立って作り方を教わった。


<ボーズの作り方>

生ボーズを蒸し器に入れる 1 皮を作る。
  ・小麦粉(強力粉)と水を混ぜてよく練り、20分ほど寝かす。
  ・手のひらでのばして棒状にする。
  ・一枚分づつの量に切ったものを簡単に丸くつぶして、小麦粉を少しまぶしておく。
  ・それぞれ麺棒で丸く平たくのばす。
 2 中身の餡を作る。以下のものをよく混ぜる。
  ・羊肉または牛肉を細かく刻む。
  ・タマネギ、ニンニクのみじん切りを加える。
  ・塩を加える。
  ・水を少し加える。
  ・モンゴル人は更に油も加えるらしいが、日本人には油っこすぎるので入れなかった。
 3 皮の中心に肉の餡をのせて、周りの皮と皮をくっつけながら丸く包む。
   (片方の手で肉を中に押し込みながらやると包みやすい。)
 4 20分ほど蒸し器で蒸す。

蒸し上がった”ボーズ” たったこれだけで、おいしいボーズが出来上がった。モンゴル料理は、基本的に小麦粉と肉を使ったものがほとんど。小麦粉はこのように皮にしてみたり、麺にしたりする。それを蒸したり、揚げたり、炒めたり、スープにしたり。羊肉は私たちにとっては臭みが気になるが、モンゴル人はこの臭みが好きなようだ。 

 バヤサーの家では、モンゴルの民族衣装「デール」も着させてもらった。遊牧民にとっては普段着だけれど、ウランバートルの人はナーダムというお祭りの時とお正月に着るだけらしい。フェルト地に皮や金でできたボタンやベルトがついた豪華な作り。息子や娘達は、結婚するときにデールを作って持たせてもらうそうだ。

 
バヤサー(左)のお宅にお邪魔して民族衣装”デール”を着させてもらった
見知らぬ外国人をこんなにまでもてなしてくれて感謝感激!

 


みどりの食卓

 

ボーズ(左の皿の下の方) 肉まんのような物(作り方を参照)
ホーショル(左の皿の上の方) 小麦粉で作った薄い皮に刻んだ羊肉を包んで揚げた物。
ビン(右) パイのこと。

 

ツイバン(左) モンゴル風焼きうどん。羊肉、フライドポテトなども入っていて、薄い醤油味。麺は小麦粉を練って作ったうどん状。
モンゴルうどん(右) 下のハルシュルにツイバンの麺を入れたようなもの。

 

ハルシュル(左) モンゴル風スープ。羊肉の入ったブラックスープ。
チャイ(右) モンゴル風ミルクティー。乾燥しているモンゴルの風土に合わせて、ちょっぴり塩味が利いている。昔懐かしいコルク栓の魔法瓶に入って出されることが多い。

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