カザフスタン (1)

セメイ〜アルマティ


カザフ台地の夕焼け空

  2003年7月31日〜8月1日 ベセロヤルスク〜セメイ 145km+0km TOTAL 10,787km

 国境越え

 ロシア側の出国はいたって簡単。税関でバイクの一時輸入許可証を返納し、次にイミグレで出国スタンプをもらうだけ。荷物のチェックはなかった。
 カザフスタン側は、まずイミグレで入国手続きしてもらったあと、税関へ行きバイクの一時輸入書類を作ってもらう。持ち込み通貨などの申告書は係りの人が代筆してくれた。いずれも無料。
 それにしてもこの国境の役人はみな親切で、道路情報を教えてくれたり、こちらからの質問にも親切に答えてくれるのが嬉しい。その上、国境を越えてすぐの所にあったカフェで食事していると、国境の係官も食事にやってきてチョコレートをおごってくれた。国境と言えば、所によって賄賂要求されたり両替商に騙されたりするものだが、いやぁー驚いた。

 久しぶりにホテルに泊まる

 カザフに入ってかなり旅する環境がよくなってきたように感じた。
ホテルは建物の裏側にちゃんとした駐車場やガレージを用意しているし、宿泊代もリーズナブル。インターネットカフェもホテル内や近辺に複数あって、夜遅くまで営業している。それに英語を話せる人も増えてきたようだ。5日ぶりにシャワーも浴びれて身も心もさっぱり。

 核実験の町

 このあたりは旧ソ連時代、1949年から1989年まで40年間に、470回にも及ぶ核実験が行われてきたという。旅行する程度なら問題ないくらいまで放射能レベルは下がっているとのことだが、あまり気持ちのいいものではない。
 ホテルではJICAの仕事で日本の医療機関からやってきた人たちと出会う。訊くと、近郊の村では核実験で被爆した人々が今も後遺症に悩んでいるそうで、彼らはその看護体勢を調査するためにやってきたそうだ。

 【みどり日記】

 日本橋

日本の協力で造られた橋 セメイの街には、川に大きくて立派な橋が架かっていた。日本の企業が造ったそうだ。私たちが日本人だと知ると、みんなその橋のことを話してくれる。街にとっても自慢の橋なのだろう。「日本橋」と呼ばれているそうだ。
 ホテルのレストランではライブ演奏が行われていて、歌手が日本の歌まで歌ってくれた。日本に大変好意的な街である。

 両替

カザフスタンの通貨 Tenge(テンゲ) カザフスタンに入ったので両替をした。 
 1$=146テンゲなので、1テンゲ=約0.8円といったところか。
 ロシアのルーブルもテンゲに両替してくれる。

 広島、長崎とセメイ

 JICAの仕事できた看護婦さんには、いろいろなことを教えてもらった。核実験の街だったなんて、私たちは聞くまで全く知らなかった。
 8月6日は広島の原爆の日という事で、ここセメイでも式典が行われるという。日本、特に広島、長崎とこの街は、同じ被爆地ということで、「もう戦争はやめよう!」という共通の思いでつながっているそうだ。彼女たちに会うまで、そんなことも知らなかったなぁ。今日私たちが連泊したのは、彼女たちに会うためだったのかもしれないとさえ思えてきた。そしてこうやってインターネットを通じて、多くの人にもこの反戦の想いを知らせるためだったのかもしれない。

 インターネットカフェが多い

 セメイの街は、インターネットカフェが多かった。1時間100テンゲ(約80円)と料金も安い。イルクーツク以来久しぶりにインターネットをやる機会がもてた。
 ホテルセメイのビジネスセンターの場合、自分のパソコンも繋げさせてくれるので大変助かった。
 

    

  2003年8月2日〜3日 セメイ〜タルディコルガン付近 438km+381 TOTAL 11,606km
 カザフ台地

 セメイから南への道は、周辺で核実験が行われていたためか、元々住んでいなかった場所なのかは知らないが 人がほとんどいない荒涼とした半砂漠地帯が続いた。ところどころで見かける小さな村は家畜を飼って細々と生活しているようだ。
 道はほとんど舗装されているのだが、路面がうねうねと波打っておりスピードを出して走れたものではない。

 ポリスに二度止められる

ポンコツのパトカーと警官 前を走っていたポンコツのパトカーが窓から警棒を出してきて、停止を命ぜられた。こんな砂漠の中の一本道で何の用だろう。今までの経験上、人けのない路上で警官に止められるとろくな事がなかった。奴らは難癖つけて罰金を取ろうとしたり、見逃し料と称して賄賂をもぎ取ろうとするのだ。もっとも、月給がわずか数千円の彼らはそういった「アルバイト」をしなければ生きてゆけないのかもしれないが...。
 さてさて、何を言われるのか身構えていたら普通の善良(?)な警官であることがわかりホッとする。
 そして更に走った先の検問でまた止められたが、ここの警官も善良な人だった。カザフの警官はマフィアとグルになっているので気を付けろと言われていたが、まったくそんな気配がない。その警官からは、「強盗が出るから食堂やガソリンスタンド以外で止まるんじゃないよ」との忠告を受ける。

 キャンプ地探しでみどり転倒

軍の格納庫 石のごろごろしている丘を越え道なき道を走って行こうとしたところ、キャンバー(斜面)ぎみになっているガレ場でみどりが転倒。幸い人車ともに大したダメージはなかったが、バックミラーが割れた。なんだかみどりのバイクだけ日に日にボロっちくなっていくなぁ。

 いつもの事なのだが、オフロードバイクの機動性を生かし荒れ地でも丘でも気にせずヅカヅカ入って行きたいのだが、自分一人走れてもみどりがついてこれなければ意味がない。仕方なく舗装道路に戻り、更にキャンプ地を探して南下。さっき会った警官も言っていたが、強盗が出るのでガソリンスタンド以外では止まるなと言ってたっけ。なので、人目に付く場所でキャンプするのはどうしても避けなければ。
 何度か道を外れながらも道路から見えないような場所を探しまわり、真っ暗になる前に何とかキャンプできそうな場所を見つけることができた。地平線が360度ずーっと見渡せるような場所ではキャンプ地探しにホント苦労するよ。

 【みどり日記】

 地平線と満天の星

 昼は地平線を見ながら何もない大地を走り、夜は満天の星の下でキャンプ。実はもうすっかり飽きてしまったのだけれど、申し訳ないくらい贅沢しているんだなぁと思う。

 魚の干物売り

魚の干物を売る少年たち 魚の干物を掲げて、通行する車を客引きしている店がいくつもあった。店と言っても木の枝を組み合わせただけの簡単なもの。そこに干物を並べて売っていた。食べてみたがちょっと塩っぱめ。こんな海もない所なのに、どこで釣れた魚だろうかと聞いてみると、この先にあるサスイ湖の魚だと教えてくれた。
 お父さんの手伝いをしている少年達は車が通るたびに干物を手に掲げて客引きをしている。試しに私も一度やらせてもらったが、通り過ぎて行く車に何とも虚しさを感じてしまった。通りかかる車のうち、何台がこうして立ち止まって買っていってくれるのだろうか。一匹100テンゲ(約80円)で、日にいくら儲かるのだろうか。考えたらますます虚しくなってしまった。魚の干物 (一匹100円くらい)
 
 領土争い

 中央アジアはカザフスタン、キルギスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンという国々があるけれど、国境線は入り乱れ、政情は不安定だ。旧ソ連崩壊後、大きな力から解き放たれたそれらの民族が土地の奪い合いをしたということだ。だから国境線もあんなに複雑なのである。国境付近は戦いで多くの人々が亡くなっている。
 さて、我が家のテントの中でもミドリスタン領とヒロユキスタン領が領土争いを繰り広げていた。
 「もう、ミドリスタン領は山岳地帯だわ。地面がデコボコしていて背中が痛いよ〜!」
 「この線まで俺の所なんだから、もう少し向こうへ行けよ。」
 狭いテントの中は大騒ぎ。夫婦と言えどもこうである。ましてやそれが他民族間のこととなれば、争いが絶えないのもわかるような気がする。

 

  2003年7月4日〜6日 タルディコルガン付近〜アルマトゥイ 336km+0km+0km TOTAL 11,942km
 カザフのツーリングライダー、ヴィクトルに会う

黒いTシャツがビクトルさん セメイから二泊三日の行程でアルマトゥイへ到着。この町は正式にはカザフスタンの首都ではないのだが、各国の大使館が集合し、事実上首都のような機能を果たしていた。
 町でホテルを探していると、スクーターに乗ったカザフ人が止まってくれた。ビクトルと名乗る彼は実はカザフでも珍しいツーリングライダーで、何カ国もバイクで走った経験を持っていた。訊くと最近までモンゴルに滞在していたそうで、なんと7月15日に路上で僕たちとすれ違ったという。そういえばウランバートルからロシア国境へ行く途中でアフリカツインばかり7台のバイクツーリストとすれ違ったっけ。彼はその中の一人だったらしい。あれから一ヶ月弱、モンゴルから何千キロも離れた場所で再会できるとは奇遇、これも何かの縁だろう。安いホテルを何件か教えてもらったあと、明日さっそく彼の働いているバイクショップへ顔を出すことにした。

 翌日訪れたバイクショップは、日本の中古バイクが10〜20台置いてあり、何人かのメカニックがバイクの整備をしていた。働いているというよりも趣味で始めたような感じで店の名前もまだ無いらしい。訊いたら「アルマトゥイバイククラブとでも言っておくかな」との答え。消耗部品の在庫状況は中古のタイヤが少々。あとは中古バイクの部品が期待できると言ったところか。バイク屋が皆無な中央アジアの事なので将来の発展を期待したい。

 写真を見せてもらいながらお互いの旅の話に花が咲く。ビクトルは毎年の夏休みを利用し大陸を何度かに分けて横断していた。昨年はヨーロッパからトルコを経てカザフスタンまでのルートを、今年はカザフ〜ロシア〜モンゴルのルートを6人のスイス人をガイドしながら走ったそうだ。そして来年はモンゴルから北京まで、さらに再来年は北京から日本までのルートを予定している。日本へ来たときは是非サポートしてあげたいところ。連絡先を交換し日本での再会を約束した。

 バザール

 アルマトゥイの中央市場にはありとあらゆる食材が揃っていた。精肉売り場では豚、牛、馬などの肉が固まりで店頭に並び、鶏や羊は一匹まるごと吊されて並んでいる。
 このあたりでは「バザール」と呼ばれる市場だが、モンゴルのザハではあまり見なかった男の店員が多くなる。特に香辛料を売っている人は彫りの深い顔をしたオヤジばかり。買いに来た客もヒゲ面の男がちらほら。イスラム色が強くなると買い物が男の仕事になると聞いていたが、中央アジアに入り少しずつ文化圏が変わってきたのを感じた。

ナッツや乾燥果物が並ぶ 羊が一頭づつぶら下がっている

【みどり日記】

 アルマトゥイでホテル探しに奔走
 
 ガイドブックで目星をつけていた安ホテルゼルデは営業していなかった。
 スクーターに乗ったお兄さんビクトルも2件ほど案内してくれたが、40$と少し高い。中国大使館横のホテルも同じく40$だった。同じくガイドブックに出ていたホテルDauletは、改装されたのかとても綺麗になっていて、しかも100$くらいと値段も高くなっていた。アルマトゥイは他に比べホテルが高い。
 紹介されたホテルアルマトゥイへ行ってみた。シングルしかなかったが、3300テンゲと手頃な値段だ。シングルを二人で使うことにした。
 ホテルに着いたとたん、雷を伴う大雨が降ってきた。間一髪助かった。この大雨のなか宿を探してさまようなんて、考えたくないほど惨めだ。

 カザフスタンのビザ

 私たちのビザは、1ヶ月シングルエントリーのツーリストビザである。
 有効期限は、ビザに記載された日付から日付までという国もあれば、その期間中に入国すれば入国日から1ヶ月間有効という国もある。ビザの期限が8日で切れる私たちは、カザフスタンがどちらのタイプなのかというのは大問題であった。それを聞くためにオビールへ行った。
 オビールはパスポートを持ったカザフ人でごった返していた。案内所もないし、英語のわかる受付もない。人に聞きながら指示された部屋へ行ってみたが、相手にされなかった。それでもずかずかと入っていき質問を繰り返す。カザフのビザは前者だったようで、私たちは8日までに出国しなければいけないことがわかった。
 ビザの期限を延長してもらうことも考えたが、ツーリストビザの場合、延長もできないという。今後のルートについて検討していたけれど、ここはもう出るしか道はない。ビザなしで行けるキルギスへ向かうことにした。
 シングルエントリーというのは、一回しか入国できないビザである。国境が入り乱れたカザフの場合、主要道路がいくつもの国境をまたぐところもあるので、ダブルエントリービザをとっておいた方がより動きやすい。
 
 レジストレーションで罰金

 オビールでは、私たちのビザを見ながらやたらと招待先の欄を指し示す。レジストレーション(外国人登録)は、入国後5日以内にやらないといけないそうだが、私たちはセミパラチンスクのホテルで済ませたはずである。したがって、特に気にもとめていなかったのだが、大きな間違いであった。
 カザフスタンのレジストレーションは、インビテーション(招待状)を出してくれた招待先に出向いて登録をしなければいけなかったようである。ビクトルの知り合いの旅行会社でそれを初めて知って、青くなってしまった。もうすでに入国してから6日もたっている!
 幸いにも、招待先はアルマトゥイにあるホテルだった。これが全く別の都市だったら、ビザの期限までにレジストレーションもできなくなるところだった。
 慌てて招待先のホテル「オトラル」へ行くと、担当のおばちゃんが何とも難しい顔をしながら私たちのビザを見ていた。
 「今日はもう遅いから、明朝9時にここへまた来なさい。」と言われて帰された。ポリスと相談するそうだが、罰金もかかる模様。
 翌日、ドキドキしながら出向いた。結局一人当たり、レジストレーション2,200テンゲ、罰金800テンゲかかった。夕方、パスポートに青い紙のレジストレーションが貼られて戻ってきた。2日ほど期限は過ぎてしまったが、何とかこれだけの罰金だけで済んで良かった。実は招待先にも罰金が科せられるそうで、迷惑をかけてしまった。

 


みどりの食卓


ラグマン: 中国から中央アジア全般にあるようだが地域や店によって少しずつ違う。大根、人参、ピーマン、タマネギ、ニンニク、サヤエンドウ、牛肉などが入ったうどん。スープは香辛料で赤い。写真にあるような酢や唐辛子で味を調整して食べる。


ガラヤ(左): ミートソースに似ている。牛肉とタマネギなどの野菜を細かく刻んでトマト系のソースで味付けをしたものがご飯に添えられて出てきた。
サモサ(右): ひき肉が入ったパン。

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